717系900番台



 頃は1980年代半ばのことです。当時、分割民営化を控えた国鉄は、利用客の利便性を重視した数々の方策を打ち出していました。具体的には列車ダイヤの見直し、地域の実情に叶った運行形態、乗り心地の改善等々...。本来であれば新造車の投入が望ましいところではあったでしょうが、なにせ極度の財政難に直面していた組織です。既存の列車を改造してサービス向上に努めることになったのは当然のことでしょう。

 

 九州では余剰となった急行型457・475系の通勤・通学用途目的に仕様変更が行われました。1986年(昭和61年)、475系基本3両編成を2両へと短編成化し、元車の足回りはそのまま流用して車体のみを新造。両開きの乗降扉を1両あたり2か所とした717系200番台が登場しました。クモハ716とクモハ717がペアを組み、約2年かけて7編成が製造されました。しかし、数年後の1995年(平成7年)、1編成だけ717系が増備されたのですが、それがなんとも個性的な電車なのでした。この編成は900番台(901編成)を名乗ります。

 この編成の種車は457系(モハ456-14、クモハ457-14)なのですが、200番台と違って車体を新造せずに種車をそのまま改造しています。もともとあった片開きのドアはそのままに、車体中央に両開きの窓を据えています。僕は過去に一度だけ、大分駅で実車の姿を目の当たりにしましたが、とてもインパクトが強かったですね。その姿にしばし目が釘付けとなったのでありました。

クモハ+モハの電動ユニットがのようにクモハ+クモハになりました。

 実車は南九州を中心に活躍しましたが、運用区間の短縮化や他系列列車の運転区間拡大に伴い余剰となり、惜しまれながらも平成21年(2009年)に引退となりました。たった1編成だけの珍車ではありましたが、その強烈な存在感は今もなお、鉄道ファンの間で伝説の如く熱く語り継がれているといってもよいでしょう。(少々大袈裟すぎました...。)








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