SL人吉


 平成17年(2005年)のことです。JR九州の人気列車「SLあそBOY」の牽引機のハチロク(58654)が深刻な車両故障を起こし、その原因が老朽化のために修復は不可能とのニュースを聞き、鉄道ファンのだれもが同機の復活をあきらめました。ところが、小倉工場での修復作業でハチロクは奇跡の復活を遂げ、50系客車のリニューアルと併せて平成21年(2009年)4月、「SL人吉」が運行を開始しました。

リニューアルされた50系客車

 調べてみますとこのハチロクは大正11年(1922年)の生まれ。浦上機関庫、西唐津機関区、若松機関区、人吉機関区と所属していますので生粋の九州っ子なんですね。車籍上はJRで営業運転を行う蒸気の中では最古のようですが、小倉工場での修復作業の際、ほぼすべての部品を新たに調達したらしく、平成時代に新たに生まれた蒸気機関車、といっても過言ではないですね。すごいなあ。

 SL人吉には力強いパートナーがそばにいてくれまして、それは熊本所属のDE10です。このDE10もそこそこの年齢ですがよく頑張ってくれていますね。ハチロク検査入場時の代役、あるいは補機として後ろからサポートしてくれます。

 

 このSL人吉は間違いなくJR九州の人気列車の一つではありますが、その運行の経緯は決して順風というわけではありません。平成28年(2016年)4月には熊本地震で運休を余儀なくされ、令和2年(2020年)にはコロナウイルス感染症流行で4月から約2か月間の運休、さらに追い打ちをかけるように同年7月豪雨により主たる活躍の場である肥薩線が甚大な被害を受け、運転ができなくなりました。


 一方で明るいニュースも。令和2年11月、SL人吉を大ヒット映画にちなんだ臨時列車「SL鬼滅の刃」として運行することになりました。

 機関車の正面には「無限」と記されたプレートが掲げられ、いつもとはちょっと違う雰囲気になりました。この「無限列車」は大人・こども共に大好評・大人気で、運行初日のチケットはわずか1秒で完売だったとか。運行の様子を動画サイトで観ましたが、たしかに駅も沿線も多くの人であふれていました。SL人吉はホントに華のある列車だな、と嬉しく思いました。


 もちろん、最後尾にはハチロクのパートナー、DE10がついています。

 それにしても気になるのが肥薩線の被災状況です。過去には自然災害により廃線となる例がいくつもありますのでとても心配ですが、最近見事に復活した豊肥線の例もあります。今は静かに肥薩線の今後を見守っていたいと思います。一日も早くSL人吉が元気に球磨川沿いを走る姿が見れますように。






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