381系 やくも

 昭和60年(1985年)3月。僕は山陰地方の大学を受験しました。行きは小倉駅から特急まつかぜを利用して山陰本線を経由。帰りは381系電車特急やくもでまずは岡山に。そして岡山から新幹線に乗り換え、山陽路を通って九州に帰ってきました。いかにも鉄道ファンらしい移動経路ですね。(笑)

 大学受験の際にお世話になった381系電車。令和5年現在、国鉄型特急で定期運用を持つ唯一の存在となっていますが、どうやら終焉の日も近づきつつあるようです。あの日のやくもは堂々9連の岡山行きでした。当時、まだ10代だった僕の目には381系国鉄特急色やくもはカッコよく映り、とてもしびれましたね。

 381系やくもの歴史は古く、伯備線投入は昭和57年(1982年)にさかのぼります。勾配と曲線の多い山岳路線のスピードアップを目的に開発された自然振り子式電車である381系でしたが、その頃はすでに「しなの」「くろしお」で運転実績があり、伯備線は3番目の投入線区ということになります。

 運用当初はグリーン車サロ1両組み込みの9連が基本編成でしたが、のちにモハユニット1組(5・6号車)を抜いた7連編成が主に営業に就いたようです。(ただし、多客期は2両増結して9連にされていたようです。僕が乗車したのはモハユニット1組を増結した9連編成でした。)

 国鉄末期となる昭和61年(1986年)。くろしおへの車両捻出を目的として、中間電動車モハ381のクモハ化(先頭車化)改造が行われました。これにより、やくもは6連が基本編成となりました。このクモハには貫通扉が設置され、多客期の増結に対応できるような構造になっています。やがて、国鉄からJRに移行することになりますが、やくもはしばらくこの編成を維持することになります。

 僕は1994年(平成6年)版の時刻表を所有しています。巻末にある特急の編成を見ますと、やくもの編成は6連のみでした。(時に4連の運用もあったようですが。)出雲市寄りが1号車で岡山寄りが6号車です。1・2・3号車が自由席、4号車がグリーン車、5・6号車が指定席でした。それにしても目を引くのはやくも19号の記述でしょうか。この列車は米子〜西出雲間が普通列車だったのですね。これは少々驚きでした。

 伯備線のページを開いてみます。おお、特急やくも号がズラリと並んでいます。おや? これはすごいなあ、やくも6号(赤い傍線部)は伯備線内の全駅を通過ですね。

 この非常に個性的なやくも6号について、僕はいろいろと調べてみました。どうやらこの列車は当時の鉄道雑誌にも注目されていたようで、1993年11月の乗車記録の記事が当時、ある雑誌に掲載されていました。文章中でこの列車のことが「スーパー6号」と表現されていましたが、驚くことに1994年12月からこれが正式な列車名となっています。実際に1996年発行の時刻表には「スーパーやくも6号」とあります。

 上述した停車駅の少ない速達タイプを「スーパーやくも」と呼ぶことになりましたが、それに合わせ、1994年から1995年にかけて6両編成3本が改造工事を受けることになります。塗装は従来の国鉄色から薄紫色をベースにして3色の帯を配置したものとなり、ずいぶんと落ち着いた感じになりました。一番の特徴はもともと中間に挟んでいたグリーン車サロをパノラマ付き先頭車にした点でしょうか。うん、さすが優等列車感満載となりました。ちなみに2006年(平成18年)3月のダイヤ改正で「スーパーやくも」の名称は「やくも」に統一されて消滅しています。

 さて、スーパーやくも仕様となった編成以外は1997年(平成9年)、塗装の変更とリニューアル工事を受けて運用を開始します。塗装は灰色地をベースに緑色・黄色の帯が入ります。スーパーやくも色に比べてずいぶんと明るくなった印象を受けます。

 前述のように「ス―パーやくも」の名称はやがて「やくも」に統一されまして、充当編成を特に区別する必要がなりました。その結果、2011年(平成13年)までにすべての381系電車に対して内装を中心に改造が施され、「ゆったりやくも」という愛称が与えられました。外見では白と赤の2色を基調とした塗装が特徴です。これが現在見られているものですね。

 実車は混色編成での運用を見る機会がよくありました。これは是非、模型でも再現したいところです。

 新型車両への置き換えを知り、せめて一度だけでも381系に乗車しておきたいという思いは強いのですが、今のところ実現が難しい状況です。たとえ会うことが叶わなくても、最後の日まで元気よく走ってくれることを模型を眺めながら願うのでした。

 

 ちなみに山陰路・山陽路をめぐる旅行を兼ねた受験は見事に失敗し(涙)、翌年の春は国鉄色の485系にちりんのお世話になったのでありました。






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