九州を駆けた国鉄型電機たち(その5)


EF81形

 EF81形は1968年(昭和43年)に日本国有鉄道によって開発された交流直流両用電気機関車です。もともとは日本海縦貫線にある50ヘルツ・60ヘルツの交流電化区間と直流電化区間を直通走行ができる電気機関車として開発された経緯がありまして、翌1969年(昭和44年)、北陸本線(直江津駅〜糸魚川駅間)の直流電化開業に合わせて運用を開始しています。さて、1970年代の時刻表を眺めてみますと、下関駅と門司駅間を行き交う客車列車の数の多さに驚かされます。ブルートレインを含む長距離客車列車のまさに全盛期だったのですね。当時、下関駅で九州に向かう下り客車列車を牽引してきた直流型電機からバトンタッチを受けたのは交直流型電機EF30形でしたが、九州ブルトレ増発用としてここにEF81形が加わることになります。

国鉄EF81形301号機 (奥に302号機)
 

 九州に初めて配属されたEF81形は先輩(EF30形)譲りのステンレス未塗装ボディスタイルの300番台でした。1973年(昭和48年)に2両(301号機・302号機)が、翌1974年(昭和49年)にはさらに2両(303号機・304号機)が製造され、計4両が運用に入りました。このEF81形、配置当初は重連総括ができないため単機での運転で、しかも関門限定運用の旅客列車専用電機だったのでした。折しも当時の世は「ブルートレインブーム」。関門区間を行き来するブルートレイン専用の牽引機となれば鉄道ファンから人気が出ないわけがありませんよね。彼らはいつしか「関門の主(ヌシ)」という名誉ある称号を与えられ、まさに全盛期ともいえる活躍をしていたのでした。

 九州ブルートレインの本数のピークは1974年(昭和49年)頃でしょうか。翌年3月には山陽新幹線博多駅が開業し、以降のブルトレは次第にその本数を減らしていきます。そのような状況下で関門専用機であるEF81は次第にヒマを持て余すようになり、1978年(昭和53年)、301号機と302号機の2両が常磐線(内郷機関区)に転属してしまいました。(そしてほどなく車体はローズピンク塗装を受けています。)これら2両は九州と永遠にお別れなのかと思われたのですが...。その後、老朽化に伴うEF30形電機の廃車が進み、なんと1986年(昭和61年)に301号機と302号機は門司に呼び戻され、303号機・304号機と約7年ぶりの再会を果たしたのでした。(車体色はローズピンクのまま...。)同時に富山や長岡で働いていたEF81形も門司に集められています。

 

 門司に集結したEF81形は300番台も含め、すべて重連総括ができるように改造を受け、300番台以外は400番台を名乗るようになります。やがて国鉄は分割民営化され、それに伴いEF81形もJR九州所属機とJR貨物所属機とに分けられました。409号機〜414号機までがJR九州に、300番台と401号機〜408号機までがJR貨物に編入されています。

 

408号機 JR貨物試験塗装
 

 

303号機 JR貨物 青ひげ
 

 

410号機と411号機 JR九州 
 

 

300番台の生き残り303号機
 

 さて、令和5年末時点においてここ九州に残っている国鉄時代生まれのEF81形電機は300番台が303号機1両のみ、400番台が403号機、404号機、406号機の計3両まで減ってきています。いよいよ両形式の終焉が見えてきましたね。九州においてブルートレインや貨物の牽引に多大な功績を残した彼らの雄姿は、いつまでもファンの記憶に残り続けることになるでしょう。ああ、国鉄時代は遠くになりにけり...。

 

 

 

EF81形 450番台

 EF81形系列の中にはJR化後に新製されたグループがあります。450番台もそのひとつ。この形式は400番台の増備としてJR貨物が新造した関門トンネル用仕様の電機です。計5両が配備されました。前期型、後期型とありまして、両者は前面の印象が異なります。しかし、EF81形を名乗るのでこれはもう国鉄型ですね。なんとなく顔つきが懐かしい...。

前期型(左)と後期型(右)   
 

前期型 451号機
 

後期型 453号機
 

EF510形 300番台

 以下はオマケの記事になります。ご存知のようにEF510形は国鉄型電機ではなく、九州で活躍してきたED76形・EF81形の置換え用としてJR貨物が新しく製造した交直流用電気機関車です。通称「ECO-POWER レッドサンダー」と呼ばれ、九州向けのグループは300番台を名乗ります。301号機は量産先行車となりますが、EF30形、EF81形300番台で慣れ親しんだ銀の車体色を受け継いでいるのが特徴です。まさに、ザ・銀釜スピリット!! 日豊本線を走る301号機を見ましたが、なかなか格好良くてですね、ED76形、EF81形の後継機としては十分合格ではないでしょうか。国鉄型電機の引退は寂しいですが、今後のEF510形の活躍はとても楽しみですね。

 

 

九州を駆けた国鉄型電機たち  おわり





inserted by FC2 system