これにて終了・Nゲージ よもやま話


よもやま話S エラーを楽しむ

 日常的によく用いる「エラー」という言葉ですが、ご存知のようにこれは誤りや間違いを意味する英単語「error」から来ています。実生活・実社会の中ではエラーをなるべく避けたいものですが、鉄道模型趣味の世界ではエラーを楽しむ心の余裕も必要だな、と最近思うようになりました。昨今、Nゲージ精度の技術向上には目を見張るものがあります。量産完成品の段階ですでに実車が忠実に再現されていることが多くなり、僕らユーザーの満足度も高くなってきているように感じています。しかし、高い完成度に目が慣れてしまいますと手にした模型と実車とのわずかな差も気になってしまうものなのかもしれません。

 かつてKATO製SLやまぐち号35系客車の車体番号に標記部位のエラーがあり、メーカーさんに無償で車体交換を行っていただいたことがあります。始終、ていねいで誠実な対応をしていただいて、逆にこちらが恐縮してしまったことが思い出されます。しかし、この製品のクオリティーはとても素晴らしいもので、今も大切なコレクションの一つとなっています。まあ、Nゲージ車両は実車を1/150のサイズに落とし込むわけで、製造過程で何らかのエラー(というより誤差)が生じてしまうのは大いにありうることだと思いましょう。(とはいえ、T社高タカ115系リニューアル車のモハがMG仕様で販売されたのはとても残念でした。自力で何とかSIV仕様に改造しましたが。)

 身延線開業70周年記念115系2000番台3両セットです。これは模型がエラーなのではなく、実車がエラーだったのでした。2種類のカラーリングで発売されたので、当初僕はリバイバルカラー2種類が身延線を走ったのか、と思っていました。実際には違います。時は1998年。身延線全線開通70周年記念事業の一環として、湘南色115系電車の一編成を身延線デビュー当時の「身延色」(ワインレッド色。地元で「ぶどう色」と呼ばれた色調ですね。実はこれがエラーの原因となります。)に復元されることになりました。塗色の変更は名古屋工場が手掛けたわけですが、当の工場にしてみれば鉄道車両のブドウ色といえば「こげ茶」だったそうで、115系は見事なこげ茶色に塗装されて出場しました。(この電車は数日の間はこの色で営業運転を行い、その後に本来のワインレッドカラーに塗り替えられたそうです。)こげ茶色の姿を観た関係者はさぞ驚いたことでしょうねえ。

 

「ぶどう色」の認識違いによるエラー

 24系ブルートレイン、国鉄時代のオロネ24です。オロネってA寝台ですよね。よくよく車体を観察しますと、あら? 乗降口ドアの上部に星3つですね。ロネなのにB寝台への格下げ車でしょうか?(笑) まあ、これはこれで楽しいので、特に修正をせずにそのままにしています。

 

 次に。これはエラーのようなエラーではないような。EF81 300のナンバープレートにご注目。実車通りなのは左側で、右側はナンバープレートが車体色と同一になっています。僕にとって、このナンバープレートは同機のチャームポイントの一つなので悩ましいところなんですが、もしもこんな車両があったら、と考えればそれはそれで面白いかな、と。なにせこれ、けっこうな昔に購入したものなので現行の製品レベルを基準に判断してはいけませんよね。まあ、このくらいの状況は(気にはなるけれど)受け入れて、大らかに楽しみましょう。



よもやま話フィナーレ ジオラマに架線

 最近ではNゲージ完成品のクオリティ―が以前に比べて格段に上がりましたが、鉄道車両だけでなくレールシステムやストラクチャー、果ては前面搭載カメラやサウンドシステム(車両を走らせ運転士目線のモニター動画、駅の放送案内や走行音などを楽しむ)などの充実ぶりには驚くやら、嬉しいやら...。本当にすごい時代になりました。これからさらにどれだけ進化していくのだろう、という大きな期待が膨らみます。今やこれらの製品によって、たとえミニチュアであっても、かなり現実的なディテールを再現できるようになりました。さてさて。かれこれ25年ほど前、僕がジオラマを作り始めた頃、一番悩んだのが電化区間に欠かせない架線の再現でした。その当時、Nゲージ用の架線は行きつけの模型屋さんに販売されておらず、メジャーメーカーのカタログの中にも見当たりません。ならば自分で作ればいいやんと思って、細い金属線にハンダを用いて作成してみたのですが、仕上りは幼稚園児の子どもさんが描く架線を忠実に再現したものとなり、泣く泣くボツに。そんな中、たまたま手に取った鉄道模型雑誌の広告欄に架線の販売告知を見つけたのです。それは千葉県にある高頭アトリエさんの製品でした。(Nゲージ用とHOゲージ用双方の架線を販売されていたと記憶しています。)これは!と思い、大急ぎでお店に電話(当時はネットでの問い合わせ、注文は当たり前ではありませんでした。ほとんどのケースで電話での問い合わせでしたね。)店主様の親切な対応をいただき、僕は無事に架線を入手することができたのでした。  

 架線を手にして大喜びしたわけですが、もともと既製品の架線柱に対応させることをまったく考慮していない製品ですから、架線柱への取り付けはユーザーの工夫が必要となりました。ジオラマ上の架線柱の間隔調整、架線取り付け部分と架線自体の加工を要しまして、これがまたなかなか骨の折れる作業となったのでした。そもそもこの架線は非常にデリケートにできていて、不意にいったん折り目をつけてしまうと、もう元には戻らず泣く泣く破棄処分となる代物です。息を止めつつ慎重に作業した日のことは今でもハッキリ覚えています。

 架線付きジオラマが完成した時には嬉しかったですねえ。しかも、本当に仕上りがリアルだったのです。大満足でした。お気に入りの車両を置いて(もちろん電車(笑))、写真を撮りまくった日も遠い昔となりました。今では架線集電を試みるモデラ―さんもいて、Nゲージ車両が架線集電で走る映像を動画サイトで観た時には、イスからひっくり返るくらいに驚きました。もはやそのような時代なのですね。話を戻します。僕が架線付きジオラマを作ったのは1998年(平成10年)のことです。実は3年前の2020年(令和2年)、ふとジオラマを見ますと一部の架線が断線していました。設置後22年、もうこれは経年劣化でしょうね。新しい架線に張り替えようかと目下思案中です。

 かつて銀河モデルさんからも架線が販売されていましたね。こちらの架線は材質が丈夫で、2つのメジャーメーカーの既製品にそれぞれ対応。直線タイプと曲線タイプの2種類がありました。僕はT社対応の単線・複線タイプを購入しましたが、今なお手つかずです。ぼーっとしている時、架線を用いたジオラマの構想をあれこれ練るのはとても楽しいです。いつかはしっかりと作り上げたいですね。

 RM MODELS 1999年5月号に多才にして鉄道模型界の偉人である水野良太郎先生のエッセイが載っています。先生は「そもそも、電車や電機などは、たとえダミーであっても架線と架線柱が無ければ評価しない主義」と述べています。この意見には賛否両論あると思いますが、僕自身は電車・電機は架線の下でこそ、さまざまな表情や情景が作れるような気がしています。でもですね、架線を張ると本当に大変なんですよ。車両を線路に上から載せることができないので、必然的にジオラマの端からか、あるいは横からの搬入となります。ついでに線路を含めた周辺のメンテナンスも大変だったりします。そうそう、よく気をつけておかないとパンタグラフや架線自体の破損を招くことがある...。う〜ん、将来着脱式の架線が発売されればぜひ購入したいと思いますが、果たして開発されるでしょうかねえ。






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